ライトを点けて、テスターの前に車を停める。
数値が出る前に、私はレンズを見る。
年数なりの使われ方が、そこに出ている。
黄ばみ。細かな傷。光の散り方。
それだけで、「この車は通るか、通らないか」がだいたいわかる。
2026年8月1日から、全国の車検でヘッドライトの検査方法が変わる。
ロービームがダメでもハイビームで合格できた救済措置が、ついに完全に廃止されるのだ。
何が変わるのか
これまでの仕組みはこうだった。ロービーム(すれ違い用前照灯)の光軸や光量が基準を満たさなくても、ハイビームが通れば合格にできた。
整備の現場では、古い車やレンズが劣化した車が、この措置に助けられるケースを数多く見てきた。
しかし、2026年8月1日以降はこの救済措置が全国で終わる。
検査で厳格に見られるのは次の3点だ。
- 光軸——ライトが照らす方向が正しいか
- 光量——十分な明るさがあるか
- 光色——白色であるか
対象は、1998年(平成10年)9月1日以降に製造された車。それ以前の車は、従来どおりハイビームでの検査が続く。
なお、北海道・東北・北陸信越・中国地方では2024年8月からすでに先行適用されている。関東・中部・近畿・四国・九州・沖縄も、いよいよ2026年8月が完全移行の期限だ。
整備士が見る「落ちやすい車」
現場で気になるのは4つある。
- レンズの黄ばみ・曇り
最も多い。紫外線で経年劣化したレンズは、光が散乱して光軸を正確に測定できなくなる。見た目の問題だけでなく、測定値にも直接影響が出る。 - 社外品LEDバルブの使用
安価な社外品は発光点の位置がズレていることがある。ハウジング設計と合わないバルブを入れると、光軸が大きく狂う原因になる。 - 車高を変更した車
ローダウンやリフトアップは光軸の角度を変える。変更後に一度も光軸調整をしていない車は要注意だ。 - 10年以上の経年車
特に手を入れていなくても、サスペンションのヘタリなどで少しずつ光軸がズレている車がある。
今からできる準備
大げさなことは要らない。
- レンズを磨く
黄ばんでいるなら、まずここから始める価値がある。DIYなら1,000〜3,000円のキットで可能だ。 - 光軸を調整してもらう
専用のテスターが必要な作業なので、工場でやってもらう。費用は1,000〜5,000円程度だ。 - 社外バルブを確認する
「車検対応」の表記があるものでも、実際に通るかどうかは個体差がある。不安なら純正か、信頼できるメーカーのものに戻すことを考えてほしい。 - それでも心配なら予備検査へ
「テスター屋」と呼ばれる予備検査場で事前確認ができる。車検で落ちてからやり直すよりずっと安い。
費用の目安
| 対策 | 費用目安 | DIY |
|---|---|---|
| レンズ磨き(DIY) | 1,000〜3,000円 | 可 |
| レンズ磨き(プロ) | 5,000〜15,000円 | — |
| 光軸調整 | 1,000〜5,000円 | 不可 |
| LEDバルブ交換 | 3,000〜15,000円 | 車種による |
| 予備検査(推奨) | 2,000〜3,000円 | — |
| ヘッドライトユニット交換 | 50,000〜100,000円超 | 不可 |
※ユニット交換は部品代・工賃が高額になるため、最終手段と考えたい。
最後に
「今まで通っていたのに」という声は、変更後に増えると思っている。
ただ、正直に言えば、ロービームで基準を満たせない状態のまま走っている車は、夜間の安全上も好ましくない。
検査の変更が、「そろそろ見直すきっかけ」になればいいと思っている。
車検の前に一度、ヘッドライトを点けて、前の壁を見てみてほしい。
光が均一に広がっているか、妙に偏った照らし方をしていないか。
それだけで、「気になる/気にならない」が判断できる。
私は、それが車検よりも早い気づきになると思っている。
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