バッテリーは、突然死なない——整備士が読む、弱りのサインと交換のタイミング

バッテリーが上がって、エンジンがかからなくなった。
「昨日まで普通に走っていたのに」と、毎年必ず何人かのお客さんが言う。

でも私には、突然には見えない。

テスターを当てると、そのバッテリーがどんな生活を送っていたか読める。
毎朝5分の通勤を繰り返していたこと。
真夏の炎天下に長時間停めていたこと。
ドライブレコーダーとシートヒーターを常時使っていたこと。

バッテリーは嘘をつかない。
その車がどんな使われ方をしていたか、全部数値に刻まれている。

寿命は何年か

メーカーの推奨は2〜3年。
でも実際に私の工場に入る車を見ていると、4〜5年でまだ正常値を示すバッテリーは珍しくない。

違いは、走り方だ。

年間、1万km以上走る人のバッテリーは、走るたびに充電されるので劣化しにくい。
逆に、毎日5〜10分の短距離しか走らない人のバッテリーは、放電しても十分に充電できずに終わる。
2年でかなり弱っていることがある。

真夏の高温、真冬の極寒。どちらもバッテリーには厳しい。
ドライブレコーダー、シートヒーター、カーナビ。電装品が増えるほど、消耗も早くなる。

弱っているサイン

整備士として、私がよく確認するポイントを挟けておく。

エンジンのかかりが重くなった。
「キュキュキュ……」という音がいつもより遅く、弱い。これがいちばんわかりやすいサインだ。

ヘッドライトが以前より暗く感じる。
特に停車中に暗く、走り出すと明るくなるようなら要注意だ。

アイドリングストップが最近作動しない。
あの機能は、バッテリーの充電が低いと自動でオフになる仕組みだ。
「最近あまりエンジンが止まらないな」と感じたら、バッテリーが弱っているかもしれない。

リモコンキーの反応が鲈くなった。
電圧が下がると、スマートキーへの給電も弱まる。

3年を過ぎていて、何のサインも出ていないから大丈夫、は危ない。
内部の劣化は見た目にはわからない。測定器で確認するしかない。

整備士はどう診るか

私の工場では、CCA試験器でSOH(バッテリー健全度)をパーセントで測る。

SOH 80%以上なら問題なし。
60〜79%は要注意、そろそろ交換を考えてほしい。
60%を切ったら、早急に交換だ。

電圧だけでは内部の状態はわからない。
エンジン停止状態でキイレ12.4V以上あっても、SOHが低いことはある。
「なんとなく弱そう」ではなく、数値で判断するのが整備士の仕事だ。

交換費用の目安

バッテリー本体の価格は、種類によって大きく違う。

普通バッテリー(軽自動車・一般車)は8,000〜20,000円程度。
アイドリングストップ対応車用(EFBまたはAGM)は15,000〜30,000円。
ハイブリッド系の補機バッテリーはさらに高くなる場合もある。

工賌は1,000〜3,000円が相場。交換自体は15〜30分で終わる。
ただし、最近の車はバッテリー交換後にシステムのリセットが必要な車種がある。
ナビの設定やパワーウィンドウの再初期化が必要なケースもあるので、ショップに任せる方が確実だ。

アイドリングストップ車は必ず対応品を

これだけは強調しておきたい。

アイドリングストップ車に通常のバッテリーを入れると、1年以内に劣化することがある。
繰り返しの放電・充電に対応しているEFBかおGMバッテリーを選んでほしい。

バッテリーには 55B24L」 80D26R」のような規格がある。
車種に合った規格を選ぶことが重要だ。わからなければ、車検証の車台番号で調べられる。

最後に

3年を超えたら、一度点検してほしい。

バッテリーは突然死なのではない。
ゆっくり弱っていくのに、気づかないまま外出先でエンジンがかからなくなる。
その前に、測定器で状態を読ませてほしい。

タイヤと同じだ。
バッテリーにも、その車の使われ方が刻まれている。
私にはそれが見える。

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