毎年2月から3月は、私たちの工場の正念場だ。新車販売台数が年度末に集中するから、3年後・5年後の車検もこの時期にドッと押し寄せる。通常は1日5から6台の車検だが、繁忙期は8から指台に膨れ上がる。この悪循環をどう断ち切るか。小規模整備工場の経営者として、毎年この季節を乗り越えるために工夫してきたことを、ここに記しておきたい。
予約の分散が、すべてを変える
車検満了日の2ヶ月前にお客様にアプローチする。DMと電話で「1ヶ月前でも車検は受けられますよ」と案内することで、3月満了の車を…。2月に前倒しで入庫してもらう。これが第一の工夫だ。
過去の入庫データをデータベースに蓄積しておくと、3ヶ月先までの入庫予測が常に見える状態になる。予測が見えれば先手が打てる。「今月は3台、来月は7台」という見通しがあれば、人の配置も、部品の発注も、心の準備も違う。
事務作業は、繁忙期の前に片づける
1月のうちに2月から3月の入庫予定車の情報を徹底的に確認しておく。過去の整備記録から「今回交換が必要になりそうな部品」をリストアップするのだ。部品を先行発注することで「部品待ち」という最悪の事態を防ぐ。これにより入庫枠の回転速度が格段に上がる。
朝礼の時間も変わる。毎朝15分で、入庫車両・作業内容・担当者・完成予定時刻を全員で共有する。「完成予定時刻」を明確にすることで作業の優先順位が決まる。これがないと、現場は場当たり的になる。
リフトの「テンポ」を意識する
完成した車をリフトから降ろしたら、すぐに次の車を上げる。このテンポを維持することが、繁忙期の生産性を左右する。次の車の準備を並行して進めておくことが欠かせない。スタッフの手が次の車に向かっている状態を作ることだ。
リフトの稼働率は、数字で見える。「今月はリフトが何時間空いていたか」を記録すれば、改善すべき時間帯が明確になる。
非整備業務を削る
整備士の仕事のうち、実は非整備業務に思った以上の時間が消えている。電話対応がそうだ。SMSやLINEでの連絡を推進して電話対応時間を削減する。AI録音ツールで整備記録を自動生成すれば、1台あたり15かも20分の時間短縮になる。10台分で2.5から3時間の捧出だ。
これらの時間が整備にあたれば、当然、処理能力は上がる。
スタッフの「息遣い」を読む
繁忙期でも週1日の休みは死守する。体力の問題もあるが、メンタルの問題の方が大きい。疲弊したチームの生産性は驚くほど落ちる。
ミーティング記録を振り返ると、気づくことがある。雰囲気が良いチームほど生産性が高い。朝礼での「ありがとう」「助かった」の一言、人手が足りないときの協力体制。こうした「人間関係」が、最後は数字になって返ってくる。
整備工場は、結局のところ人である。だから繁忙期こそ、スタッフのコンディション管理が経営判断に直結する。
この記事は、繁忙期対策の実践を通じた整備工場経営をもとに、現役整備士・関谷弘幸が執筆しました。
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