車検の1日を、読む——整備士が見ている、点検の順序と判断のポイント

車検の日、私が最初にやることは書類の確認ではない。

車をリフトに乗せる前に、外回りを一周する。
どこから見るか、何を見るか。それが、その後の作業の段取りを決める。

8:30 外観確認と書類照合

持ち込まれた車の外観を確認する。

傷・へこみ・タイヤの状態・ライト類の点灯確認。
これはお客さんへの引き渡し時のトラブル防止でもあるが、
整備の優先順位を決める意味もある。

次に車検証と現車を照合する。
車体番号・エンジン型式・改造の有無。
書類と一致しない場合、その時点で確認が必要になる。

9:00 下回り点検

リフトで車を上げて、下回りを見る。

ブレーキホース・燃料パイプ・排気管・マフラー・フレームの颉。
特にブレーキ系の配管は、外から見えないため、ここで初めてわかる状態のことが多い。

下回りが「きれいな車」と「使い込まれた車」では、情報量が全然違う。
長距離を走った車は、それなりの痕跡がある。
何年間、どんな環境で使われてきたか、だいたい読める。

10:30 ブレーキ分解・測定

ブレーキは分解して測定する。

パッドの残量・ローターの厚み・ホイールシリンダーのオイル漏れ確認。
「見た目で問題ない」ではなく、数値で確認する。
基準値より薄くなっていれば交換を提案する。

お客さんに説明するとき、私は数字で話す。
「残量があと2mmです。新品10mmなので、今回交換しておくと次の車検まで安心です」
「薄くなっています」より「2mm」の方が、状態が伝わる。

13:00 OBD診断

OBD(車載診断装置)にスキャンツールを繋いで、
コンピューターのエラーコードを確認する。

警告灯が点いていなくても、過去に記録されたエラーが残っていることがある。
エンジン・ミッション・ABS・エアバッグ。
各システムの状態を数値で確認できる。

15:00 完成検査と引き渡し

整備が完了したら、完成検査をする。

ブレーキの効き具合・ライトの光軸・排気ガスの数値。
全項目をもう一度確認して、記録する。

お客さんへの引き渡し時に、当日の作業内容を説明する。
「今日交換したもの」「次回見てほしいもの」「問題なかったもの」の3段階で伝える。
全部問題なしではなく、「今回はここを見ました」と伝えることが、次の安心につながる。

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