車検の1日を、読む——整備士が見ている、点検の順序と判断のポイント

車を受け取ったら、まず外から読む。ボディの傑、タイヤの残溝、ライトの点灯——「お預かり前からある傑」を記録することが、信頼の起点だ。ここを丁寧にやるかどうかで、その後のすべてが変わる。

リフトで持ち上げて、下から読む。オイルパン周りの滲み、ブレーキホースのひび、マフラーの腐鉃、ドライブシャフトブーツの破れ——お客様が普段目にしない場所を、私は順番に読んでいく。ここが車検の本領だ。作業していると、本人が気づいていない不具合が出てくることは日常茶飯事だ。「オイルがわずかに滲んでいますが、今すぐ危険ではありません。次の点検まで様子を見ましょう」——こういった判断ができるのは、毎日多くの車を見ているからだと思う。

ブレーキは数字で読む。パッド残量4mm——今回の車検は通る。でも次の車検まではもたない。「あと1万kmほどで交換時期になります」と伝えるのが私の仕事だ。無理に交換を勧めるのではなく、判断材料を渡す。ディスクの摩耗、キャリパーの固着、フルードの劣化——それぞれに状態があり、それぞれに対応のタイミングがある。

コンピュータにも聴く。OBD診断で読み出す故障コードは、普通に走っていては気づかない異常の記録だ。「走れているのに、コンピュータには何かが残っていた」というケースは珍しくない。センサーの誤作動、排気系の一時的な異常——見えない場所を読む手段のひとつだ。

最後に、伝える。「ブレーキパッドが5mmです」ではなく、「消耗品があと半分くらいで、1年後に交換の時期が来ます」。専門用語を訳すのではなく、次に何をすべきかを伝えること——それが説明の意味だと思っている。

車検の1日はこうして終わる。外から読み、下から読み、数字で読み、コンピュータに聴き、言葉で伝える。どの工程も、この1台が次の2年間を安全に走るためにある。

この記事はくるまのイチハラでの実際の車検作業をもとに、現役整備士・関谷弘幸が執筆しました。

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